Processing math: 100%

Posts Issued on February 19, 2024

posted by sakurai on February 19, 2024 #743

論文の続きです。

次はMPFに移ります。MPFの議論には一部正しい部分が見られます。それは、

  • MPF,DPに分類されるフォールトはτにおいて全て修理される
  • MPF,Lに分類されるフォールトは一切故障修理されない

これらは2nd SMの機能が働くSMのフォールトの扱いとしては全く正しいです。従って、

FAVG,M=12τλMPF,DP+12TλMPF,L先に故障するSMの不信頼度としては正しいです。ところがIFとSMの区別に改善の余地があるように思われるので、その点が残念です。なぜならVSGに対してIFとSMのフォールトの効果は異なるからです。

これがSMの不信頼度であることを明確にすれば、添え字にSMを加え、 FAVG,SM,M=12τλSM,MPF,DP+12TλSM,MPF,L となります。

図%%.1
図743.1 2つの不信頼度MPF,DP/MPF,Lのグラフ

図743.1もSMの不信頼度のグラフと理解すれば全く正しいグラフです。実際には両者FMPF,LFMPF,DPのグラフを加え合わせたものが本来の不信頼度のグラフで、いわゆるsawtooth waveと呼ばれるものですが、あまり見たことがありません。

この後に1oo2のサブシステムの計算が続きますが、ここまでで十分誤っているためそれが重なるだけです。従ってここではそれを指摘しませんが、本来は1oo2というよりもIFとSMとSM2から構成されるサブシステムを考えるべきです。ただし冗長系は別とします。そのサブシステムはRBDが規格Part 10にも載っており、かつ規格にもPMHF式が掲載されています。それらを全く無視している点には改善の余地が有りそうです。

よって、以上から正しい不信頼度を求めると、先にSMが故障し、後でIFが故障する場合のDPFを考えると、

FAVG=FAVG,S+FAVG,SM,MFAVG,IF,M=(λSPF+λRF)T+(12τλSM,MPF,DP+12TλSM,MPF,L)λIF,MPFT

よって、 MPMHF=λSPF+λRF+(12τλSM,MPF,DP+12TλSM,MPF,L)λIF,MPF=λSPF+λRF+12λIF,MPF(λSM,MPF,DPτ+λSM,MPF,LT) これはSMのみがリペアラブルという1st edition規格式に相当します。

論文の誤りが深刻なのは、当該論文の誤りに留まらず、誤りが拡大再生産されることです。リトラクトしなければ永久に誤りが拡大再生産され続けます。


J. Famfulik, M. Richtar et al, "Application of hardware reliability calculation procedures according to ISO 26262 standard," Qual. Rel. Eng. Int. 2020, pp. 1-15, doi: 10.1002/qre.2625


左矢前のブログ 次のブログ右矢