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規格第2版のPMHF式の疑問 (7) |
「ISO 26262第2版解説書」(日本規格協会)のPMHF式の解読を行います。この記事の続きです。
パターン1
パターン1を規格に従って計算します。
- Pattern 1: SM1⇒IFの順にフォールトが発生し、SM1のフォールトはSM2によって緩和されるが通知されない、または緩和されない。フォールトの暴露時間は、最悪の場合の暴露時間である車両寿命となる。
規格にはマルコフ図が記載されていないので推測すると、パターン1は、SM1のフォールトが2nd SM(SM2)で検出されないため、SM1のフォールト全体に対するパターン1の割合は1−KSM,DPFとなり、マルコフ図は以下のようになります。時刻パラメータtが最初のSMのフォールトが起きた時刻、t′がVSGとなる2つ目のIFのフォールトが起きた時刻とします。

規格によるPMHFの求め方は、
1. 後に起きるIFのフォールトの確率密度をtからTlifetimeまでt′について積分しtで表します。t′まではIFはフォールトしないことに注意します。
2, 先に起きるSMのフォールトの確率密度を0からTlifetimeまでtについて積分します。
まず、IFのLAT2Sでの状態確率は、 Pr{IF in LAT2S}=Pr{IF up at t′∩VSG of IF prevented}=KIF,DPFRIF(t′) LAT2SからDPF1への微小時間での遷移確率は、IFがDPFする場合であり、 Pr{IF down in (t′,t′+dt′] | IF in LAT2S}=Pr{IF down in (t′,t′+dt′] | IF up at t′∩VSG of IF prevented}=Pr{IF down in (t′,t′+dt′] | IF up at t′}=λIFdt′
規格のとおりIFの確率を求めるには、IFは時刻0からt′まではフォールトせず(解説書のtは誤り)、かつ、t′からTlifetimeまでにフォールトする確率となります。
従って、(471.1)、(471.2)から、IFの後故障の確率を求めると KIF,DPF∫TlifetimetRIF(t′)λIFdt′=KIF,DPF∫TlifetimetfIF(t′)dt′=KIF,DPF[FIF(t′)]Tlifetimet=KIF,DPF[FIF(Tlifetime)−FIF(t)]≈KIF,DPFλIF(Tlifetime−t) ところが、解説書パターン1では以下のようになっており、2か所の誤りが存在します。

次にSMのOPRSでの状態確率は、 Pr{SM in OPRS}=Pr{SM is up at t}=RSM(t) OPRSからLAT2Sへの微小時間での遷移確率は、SMがフォールトする場合であり、 Pr{SM down in (t,t+dt]|SM is up at t}=(1−KSM,DPF)λSMdt
IFの項とSMの項を0からTlifetimeまで積分し時間平均すると、(471.3)~(471.5)を用いて、 MPMHF,P1≈1Tlifetime∫Tlifetime0(1−KSM,DPF)RSM(t)λSMKIF,DPFλIF(Tlifetime−t)dt ≈1Tlifetime(1−KSM,DPF)KIF,DPFλIFλSM[Tlifetimet−12t2]Tlifetime0=12KIF,DPF(1−KSM,DPF)λIFλSMTlifetime=12λSM,DPF,latλIF,DPFTlifetime
これは図104.2の初版PMHF式(パターン1, 2のみ)の、DPFにおけるパターン1に相当する部分と(IF⇒mと読み替えることにより)正確に一致します。

なお、本稿はRAMS 2024に投稿予定のため一部を秘匿していますが、論文公開後の2024年2月頃に開示予定です。
ほぼ同様な議論ですが、記事#476に再掲します。