※この記事は2018年に書かれたものであり、基本的には変わりませんが最近の記事で詳細計算を行っています。
SMのアンナベイラビリティ(不稼働率、PUA)QSM(t)の導出
以前PMHF式を以下で導出しました。
https://fs-micro.com/post/show/id/10.html
ここでは再度PMHFの式を導出して行きますが、事前準備がいくつか必要になりますので、まず、修理系のアンナベイラビリティの公式を導きます。
まず、修理系とは何かを説明します。ISO 26262規格には修理の問題についてはっきり書いていませんが、1st SMが修理系となります。1st SMとは、1st order SMとも呼ばれ、主機能のSG侵害(安全目標侵害=VSG)を防止するためのSMです。一方で、主機能は非修理系です。
1st SMは、2nd SMにより定期的に検査され、故障だと判明した場合は直ちに修理されます。2nd SMとは2nd order SMとも呼ばれ、エレメントがレイテントフォールトとなるのを防止する安全機構です。規格にもあるとおり、修理周期は「検査周期(τSM)+ドライバーが修理工場へ運転して行く時間+修理にかかる時間」です。従って、修理周期=2nd SMの検査周期とみなせます。
規格にははっきり書かれていませんが、検査により故障と判明した部分については、修理され新品同様(as good as new)と見なされます。この検査による故障検出割合が重要であり、Part 10では定数値KFMC,MPFで表されます。故障したうちの検出部分なので(59.1)のように条件付き確率と考えがちですが、
KFMC,MPF=Pr{detectable | failed at t}
故障検出能力は確率的に決まるものではなく、アーキテクチャ的に決まるものだと考えるため、もともとの検出部分の故障について検出可能とします。
KFMC,MPF=Pr{detectable}
検出された故障は全て修理されるものとします。
Pr{repaired | detected at t}=1
次にアンナベイラビリティQSM(t)とは、省略せずに言うとポイントアンナベイラビリティ(PUA)であり、修理系の不稼働率です。
確率の式で表せば、
PUA:
QSM(t):=Pr{(repairable)SM down at t}
のように、時刻tにおいて不稼働である確率を意味します。
一方で、アベイラビリティの式は参考ページまたはBirolini教授の教科書を参照すれば、
A(t):=R(t)+∫t0m(x)R(t−x)dx
であり、ここで、A(t)は時刻tにおけるポイントアベイラビリティ、R(t)は時刻tにおけるリライアビリティ(信頼度)、m(t)は時刻tにおけるリニューアル密度(修理密度)です。規格の特徴として、修理周期は教科書一般にあるように指数関数分布はとらず、定期的にτSM毎に行われるため、以下の式が成立します。
ASM(t)=RSM(t)+KSM,FMC,MPFFSM(τSM)n−1∑i=0RSM(t−iτSM)
修理分KSM,FMC,MPFFSM(τSM)が時刻tの関数でないのは、検出能力KFMC,MPFは一定で、かつ毎回の故障確率も一定で、検出した分は全て修理されるため、修理分が一定となるためです。
従って、SMのポイントアベイラビリティ式は以下のようになります。
ASM(t)dt=
これを1から引けば、SMのポイントアンアベイラビリティ(PUA)は以下のように求められます。
PUA:
QSM(t)dt=[1−ASM(t)]dt=
(59.8)の両辺を時刻tで微分すれば、微分可能なtにおけるPUD(Point Unavailability Density)が求められます。
PUD:
qSM(t)dt:=(dQSM(t)dt)dt=, t∉{τi=iτ;i=1,2,...,n}
※ここでの議論において、次に示すような形式的な記法を用いています。例えば、
f(t)=limdt→+0F(t+dt)−F(t)dt=dF(t)dt
と書くところをdtが無限小であることを前提として、
f(t)dt=dF(t)
としています。確率密度関数f(t)を求めるよりも、微小確率f(t)dtを求めるほうが、次での積分の記述が容易になるためです。
なお、本稿はRAMS 2025に投稿予定のため一部を秘匿しています。
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