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PFHとPMHFの比較 (2)

posted by sakurai on April 1, 2026 #1072

10 FIT・1万時間では 2 回目以降の寄与はどれくらいか

前稿の (1071.8) は、PMHF と PFH の厳密差が、寿命区間 $[0,T]$ における 2 回目以降の VSG 発生の寄与であることを示していました。ここでは、その差が実用上どの程度の大きさになるのかを、一定危険故障率を仮定した典型例で見ておきます。

前稿の記号をそのまま使えば、

$$ \mathrm{PFH}(0,T)-\mathrm{PMHF}(T)=\frac{1}{T}\sum_{n=2}^{\infty}(n-1)\Pr\{N_T^\text{VSG}=n\} \tag{1072.1} $$

です。

ここで、VSG の発生率を一定とみなし、寿命区間内の VSG 発生回数 $N_T^\text{VSG}$ をポアソン分布で近似します。たとえば、危険故障率を 10 FIT、車両寿命を 1 万時間とすると、

$$ \lambda=10\,\mathrm{FIT}=10^{-8}\,\mathrm{h}^{-1}, \qquad T=10^{4}\,\mathrm{h}, \qquad \lambda T=10^{-4} \tag{1072.2} $$

です。

このとき、寿命区間内に 2 回以上 VSG が発生する確率は

$$ \Pr\{N_T^\text{VSG}\ge2\}=1-e^{-\lambda T}(1+\lambda T)\approx4.99966668\times10^{-9} \tag{1072.3} $$

となります。これは寿命全体で見ても約 5 ppb です。

これを寿命で割って FIT 風に書けば、

$$ \frac{1}{T}\Pr\{N_T^\text{VSG}\ge2\}\approx4.99966668\times10^{-13}\,\mathrm{h}^{-1}=4.99966668\times10^{-4}\,\mathrm{FIT} \tag{1072.4} $$

です。

同じ仮定の下で、前稿の PMHF と PFH はそれぞれ

$$ \mathrm{PMHF}(T)=\frac{1}{T}\Pr\{N_T^\text{VSG}\ge1\}=\frac{1-e^{-\lambda T}}{T}, \qquad \mathrm{PFH}(0,T)=\frac{1}{T}E\{N_T^\text{VSG}\}=\lambda \tag{1072.5} $$

ですから、厳密差そのものは

$$ \begin{eqnarray} \mathrm{PFH}(0,T)-\mathrm{PMHF}(T)&=&\lambda-\frac{1-e^{-\lambda T}}{T}\approx4.99983334\times10^{-13}\,\mathrm{h}^{-1}\\ &=&4.99983334\times10^{-4}\,\mathrm{FIT} \tag{1072.6} \end{eqnarray} $$

となります。(1072.4) とほとんど同じ値になるのは、この条件では 3 回目以降の寄与がさらに極小だからです。

10 FIT という目標値に対する比で見れば、

$$ \frac{4.99983334\times10^{-4}}{10}\approx4.99983334\times10^{-5}\approx0.005\,\% \tag{1072.7} $$

です。

したがって、10 FIT・1 万時間という典型的な条件では、PMHF と PFH の厳密差は数値的には約 $5\times10^{-4}$ FIT にすぎず、2 回目以降の VSG 発生の寄与は実務上ほぼ無視できる範囲にあります。

この数値例が示しているのは、前稿の (1071.8) が表している「厳密な差」は存在するものの、多くの実用条件ではその差が十分小さい、ということです。


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