DPF1の再計算
ところがこのケース2.の場合は、(無関係と思われた)DPF1について再計算する必要があります。その理由は、IFの条件がアンリペアラブルからリペアラブルに変更され、リペアすることによりOPRの状態確率が上がり、結果としてDPF1の確率が下がるためです。図107.1に図104.1を再掲します。LAT2においてはIF=upであったのに対し、DPF1においてはIF=downとなります。
図107.1 CTMCにおいてLAT2⇒DPF1の遷移
(104.1)を参考に、IFRモデルに変更します。
¯qDPF1,IFR=1TlifetimePr{DPF1 at Tlifetime}=1Tlifetime∫Tlifetime0Pr{LAT2 at t∩IF down in (t,t+dt]}=1Tlifetime∫Tlifetime0Pr{IF down in (t,t+dt] | LAT2 at t}⋅Pr{LAT2 at t}
ここまでは(104.1)と同じです。LAT2はIFの稼働状態でかつSM1の不稼働状態であるから、
Pr{LAT2 at t}=Pr{IF up at t∩SM down at t}
IFとSM1の稼働状態は独立事象であり、IFRモデルではIF、SM1共にリペアラブルであることから、(107.2)は
(107.2)=Pr{IFR up at t}Pr{SM down at t}=AIF(t)QSM(t)
と書けるように思われますが誤りです。IFのフォールトはVSG non preventableとVSG preventableに分けられるので、分配則より、
Pr{IF up at t}=Pr{(¯IF preventable∪IF preventable)∩IF up at t}=Pr{(¯IF preventable∩IFU up at t)∪(IF preventable∩IFR up at t)}
となります。IFUに注意してください。¯IF preventableとはSM1によりVSG抑止できないことを意味し、修理は不可能であるため、その部分のIFはアンリペアラブルとなります。
ちなみに、この部分の確率はSMの状態によらずVSGとなるため、本質的にはSPFに入りそうですが、形式的にはSMがdownしているときのIFのフォールトなので、本稿ではDPFに入れます。なお、SPFに分類してもDPFに分類しても最終的には確率の総和を取るため、結果に変わりはありません。
従って、(107.4)のIFの前半がアンリペアラブル、後半がリペアラブルなので、(107.4)は、
Pr{IF up at t}=(1−KIF,RF)RIF(t)+KIF,RFAIF(t)(新規追加)=(1−KIF,RF)RIF(t)+KIF,RF(1−KIF,MPF)RIF(t)+KIF,RFKIF,MPFRIF(u)=(1−KIF,RFKIF,MPF)RIF(t)+KIF,RFKIF,MPFRIF(u),ただし、u:=tmodτ
となるため、(107.2)は(107.5)を用いて、
Pr{LAT2 at t}=Pr{IF up at t}Pr{SM down at t}=[(1−KIF,RF)RIF(t)+KIF,RFAIF(t)]QSM(t)(新規追加)=[(1−KIF,RFKIF,MPF)RIF(t)+KIF,RFKIF,MPFRIF(u)]QSM(t),ただし、u:=tmodτ
と書けます。
さらに、(107.1)の右辺積分中の条件付き確率式に、独立条件付き確率式(103.4)、及び微小故障条件付き確率式(66.8)を用いれば、DPF時の2つ目のフォールトはIF、SM1共にアンリペアラブルとなるため、
Pr{IFU down in (t,t+dt] | LAT2 at t}=Pr{IFU down in (t,t+dt] | IFU up at t∩SM down at t}=Pr{IFU down in (t,t+dt] | IFU up at t}=λIFdt
となります。
よって、(107.1)に(107.7)、(107.6)を適用した上で、PUA(59.8)、PA(59.7)、故障率(66.6)及び弊社積分公式(60.1)及び(60.2)を用いれば、
¯qDPF1,IFR=1−KIF,RFTlifetime∫Tlifetime0QSM(t)RIF(t)λIFdt+KIF,RFTlifetime∫Tlifetime0QSM(t)AIF(t)λIFdt=1−KIF,RFTlifetime∫Tlifetime0QSM(t)fIF(t)dt+KIF,RFTlifetime∫Tlifetime0QSM(t)qIF(t)dt=1−KIF,RFTlifetime∫Tlifetime0[(1−KSM,MPF)FSM(t)+KSM,MPFFSM(u)]fIF(t)dt+KIF,RFTlifetime∫Tlifetime0[(1−KSM,MPF)FSM(t)+KSM,MPFFSM(u)]⋅[(1−KIF,MPF)fIF(t)+KIF,MPFfIF(u)]dt,ただし、u:=tmodτ≈1−KIF,RF2λIFλSM[(1−KSM,MPF)Tlifetime+KSM,MPFτ]+KIF,RF2λIFλSM[(1−KMPF)Tlifetime+KMPFτ]=(1−KIF,RF)α+KIF,RFβ,
ただし、{α:=12λIFλSM[(1−KSM,MPF)Tlifetime+KSM,MPFτ]β:=12λIFλSM[(1−KMPF)Tlifetime+KMPFτ]KMPF:=KIF,MPF+KSM,MPF−KIF,MPFKSM,MPF
となります。
(2021年1月新規追加)これを整理すれば、
(107.8)=12λIFλSM[(1−KMPF2)Tlifetime+KMPF2τ]ただし、KMPF2:=KIF,RFKIF,MPF+KSM,MPF−KIF,RFKIF,MPFKSM,MPF
となります。これは(107.6)の新規追加式を積分した結果と同一になります。
RAMS 2020においてPMHF式の論文発表が終了したため、本記事を開示します。
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