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Posts Issued in February, 2020

posted by sakurai on February 5, 2020 #101

米国ロチェスター大学の資料(そのキャッシュ)によれば、 ランダムプロセスηtにおいて、ステート空間をi,j=0,1,2,...,Eについて、以下の式を満足する場合に、ランダムプロセスηtは連続時間マルコフ連鎖(CTMC)となります。 Pr{η(t+s)j | ηti,ηuxu,u<t}=Pr{η(t+s)j | ηti} 遷移する確率が、過去の時刻uでの状態に依存せず、現在時刻tでの状態にのみ依存することを表します。

CTMCであるηtにおいて、ステートiからjへの瞬間遷移確率関数(Instantanous Transition Probability Function)Pijの式は以下のようになります。ただし、元の式を「信頼性関係式の定義式の表現」で導入した記法に変更しています。 Pij(t):=Pr{η(t+dt)j | ηti}=qijdt+o(dt) qijは遷移率(Transition Rate)です。ランダムプロセスηtにおいて、確率変数Xを無故障稼働時間とします。Mを稼働状態のサブセットとし、Pを不稼働状態のサブセットとすれば、X=inf{t:ηtP}と示すことができます。

稼働状態Mから不稼働状態Pへの遷移を考えると、(101.1)は、 PMP(t)=Pr{η(t+dt)P | ηtM}=qMPdt+o(dt) となりますが、これと前記事の微小ダウン確率形式と比較し、 Pr{η(t+dt)P | ηtM}=qMPdt+o(dt)=φ(t)dt すなわち、単位時間あたりの稼働状態Mから不稼働状態Pへの遷移率qMPは、o(dt)0の場合のダウン率φ(t)にほかなりません。

ここで、条件付き確率の式から(101.3)の両辺に状態確率Pr{ηtM}をかけるとPUDが求まります。PUDについて、0からTlifetimeまでtで積分し(101.2)を用いれば、 Tlifetime0PMP(t)Pr{ηtM}=Tlifetime0Pr{η(t+dt)P | ηtM}Pr{ηtM}=Tlifetime0Pr{η(t+dt)PηtM}=Tlifetime0q(t)dt=Q(Tlifetime) 前記事の平均PUD式(66.13)に基づき(101.4)の両辺をTlifetimeで割り、SPFになる平均PUDを¯qSPFで表せば、 ¯qSPF=1TlifetimeQ(Tlifetime)=1TlifetimeTlifetime0Pr{η(t+dt)P | ηtM}Pr{ηtM}=1TlifetimeTlifetime0Pr{η(t+dt)PηtM} これにより、CTMCを用いた平均PUDを求める基本式が求まりました。PMHFを求めるには、(101.5)式を駆使していきます。

RAMS 2020においてPMHF式の論文発表が終了したため、本記事を開示します。


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posted by sakurai on February 4, 2020 #199

プレスリリースで案内のとおり、去る1月27日から4日間、米国カリフォルニア州パームスプリングスで開催された、RAMS 20201において、PMHF2に関する論文を発表しました。論文の題名は"Generic Equations for a Probabilistic Metric for Random Hardware Failures According to ISO 26262"です。邦題は「ISO 26262に準拠したランダムハードウェア故障の確率的メトリクスの一般式」であり、PMHFを正確に評価することを可能にするものです。RAMS 2020は、IEEE RS3が主催する、信頼性工学に関する世界最高レベルの国際学会です。

発表の内容は、IF4及びSM5から構成されるサブシステムにおいて、IFがISO 26262第1版に対応する修理不能なモデルと、第2版に対応する修理可能なモデルの2つを考案し、それに基づいたPMHF式を導出し、第1版とは一致、第2版とは不一致となることを示しました。次に第2版との不一致について、規格第2版のPMHFの過小評価と、EOTTI6の過大評価を計算し、規格第2版は31倍もの過剰な設計制約となっていることを明らかにしたものです。

下の写真の向かって右はRAMS 2020のGeneral ChairであるDr. Julio Pulidoです。

図%%.1
図199.1 RAMS 2020にて

下の写真の左上はColloquim Session ChairであるJess Leszczynskiと、右上はPaper Session ChairであるDongmei Chenと、右下はProgram Committee ChairであるOm Yadavとの写真です。

図%%.2
図199.2 RAMS 2020にて

[追記]
論文の公開場所は、以下のIEEE Xploreです。
https://ieeexplore.ieee.org/document/9153704


1RAMS 2020: The 66th Annual Reliability & Maintainability Symposium
2PMHF: Probabilistic Metric for random Hardware Failures ⇒用語集
3RS: Reliability Society
4IF: Intended Functionarity ⇒用語集
5SM: Safety Mechanism ⇒用語集
6EOTTI: Emergency Operation Tolerance Time Interval⇒用語集


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